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2008.02.26 良い話?大久保
私もまだまだだと感じております。。。
☆☆ ”正しいこと”ほど真綿に柔らかく包んで相手に渡せ ☆☆
数日後、村田(経芳)のところに大久保(利通)がやってきて、こう言った。
「三日後に、久光さまと藩公(島津久光の息子で、そのときの薩摩藩主)の前で君の作った新しい銃と、古い砲術家たちの作った銃の試射会を行なうぞ。準備しろ」
村田はビックリした。そして、見る見る喜びの色を目いっぱいにあふれさせて、感激に目を潤ませた。大久保は「うん、うん」とうなずきながら、
「古い砲術家に負けるなよ」
と言ってすぐ去った。村田には、大久保の温かい気持ちが伝わった。
(大久保さんは、言葉どおり、そういう段取りをつけてくれたのだ。俺が馬鹿だった)と反省した。
試射会の当日、大久保は鉄の的を用意した。そして、「村田君の銃と、諸先生方の銃で、あの的を撃ってください」
と頼んだ。古い砲術家たちは、
「若造の新式銃など、あの鉄板を撃ち抜けるものか。俺たちのほうが優れている」
という自信満々の態度で射撃を開始した。しかし、古い砲術家たちの撃った弾は鉄の的を射抜けなかった。ところが、村田経芳の撃った弾は、見事に鉄板を射抜いた。
古い砲術家たちは顔を見合わせた。得意になった村田は試射会後、すぐに大
久保に迫った。
「久光さまや、殿さまの前で、私の銃が見事に鉄の板を射抜きました。大久保さんのおかげです。このうえは、ぜひとも私の銃を薩摩藩の銃に指定してください。大量生産できるようにします。製作の指揮は私が取ります。
目を輝かせてそう言った。しかし、大久保は首を振ってこう答えた。
「ダメだ。今日の試射会で、君は古い砲術家たちを傷つけた。あの人たちは心に深い傷を追ったろう。それをそのままにして、すぐに君の作った銃の大量生産に入れば、あの人たちの立場がなくなる。そして、君はあの人たちの恨みを買うよ。そんなことは俺にはできない」
「いくら恨まれてもかまいませんよ。こっちの方が正しいんですから」
「やめろ。その、こっちの方が正しいんだという考え方は好かない。なんでも正しいから、それを押し付ければいいと言っても人はついてこない。正しいことほど、柔らかく相手に伝えなくてはダメだ。あの人たちの傷が治った頃、さらにもう一段進めよう」
村田は明らかに不満そうな顔をした。
若者のはやる気持ちとしてはやむを得ない。しかし、古い砲術家たちも馬鹿ではなかった。彼らは翌日大久保のところへやってきた。
「大久保さん、我々も考え直さなければいけないようだ。いまのままでは、薩摩藩の銃の力は弱い。村田君はいい銃を作った。しかし、いますぐ彼の銃を採用されると、我々の立場がない。どうだろうか。我々の子どもや門人を、江戸とか長崎の西洋銃の砲術家のところで勉強させることができないだろうか」
これを聞いて、大久保は胸の中で喜んだ。
(俺のやり方がだんだん実を結んできている)
―――――― 中略 ―――――――――
この話はすぐに村田にも伝わった。村田がすぐに大久保のところにやって来た。
「古い先生方が、大久保さんのところにそういうことを頼んだというのは本当ですか」
「本当だよ。それだけじゃない。先生方の中には、君のところに入門して、新しい銃の作り方を習いたいとおっしゃっていた方もいるぞ」
「なんですって、嘘でしょう」
村田は信じられないような顔をした。大久保は首を振った。そして、
「嘘じゃない。本当だよ、村田君。俺の言ったことは本当になったろう。古い先生方だって全部が全部馬鹿じゃない。なかには、君にこだわっている人がいるかもしれない。しかし、多くの人たちは、自分の感情を捨てて、やはり薩摩藩のためになることなら、自分たちの古さを捨てて、新しいものに考えを変えていこうという気持ちを持っていらっしゃる。君のところに入門したいなどと言う古い先生方には、俺も頭が下がったよ。
そういう人たちを、ただしゃにむに攻撃して古いものだからという理由で壊せばいいというものじゃない。わかるか、村田君」村田はうなだれていた。そして、小さい声で、
「よくわかります。私が間違っていました。私は、思い上がっていたのです。恥ずかしいと思います」
と言った。大久保はポンと肩を叩いた。
「わかればいいんだ。古い先生を教育して、薩摩藩のために尽くしてくれ」
村田は大きくうなずいた。
―――――― 中略 ―――――――――
そこで彼は、藩の実力者島津久光に進言して、村田の発明した銃を薩摩藩の統一した銃として採用してくれるように頼んだ。
久光はずっと前に、村田の作った銃が見事に鉄板を撃ち抜いたことを自分の目で見ていたから承知した。
村田経芳の作った銃は、その後「村田銃」と呼ばれ威力を発揮するようになった。特に、旧徳川幕府軍を明治新政府が攻撃した鳥羽伏見の戦いやその後の戦争で、大いに役立った。薩摩藩が強かったのは、この村田銃によってでもある。
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<『 人生の師 「一期一会」をどう生かすか 』 三笠書房 童門 冬二 著 より >
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